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■法律事例集

▼労働契約の終了

質問 私は某会社に勤務するものですが、先日上司と些細な喧嘩をして、ついカッとなり「こんな会社辞めてやる」と啖呵を切り大学ノートに「辞表」の走り書きをして帰宅しました。翌日いつもどおり出勤したところ私の机や会社から貸与されていた仕事道具が片付けられていました。上司からは「昨日辞職したのだから君の働く場所はないよ」といわれました。私は会社をやめる気はなかったのですが、以前と同じように勤務することができるのでしょうか。なお上記の辞表は人事決定権者にはまだ届けられていないようです。

回答 非常に難しい問題ですが、@、あなたの発言、辞表の提出が法的に無効な意思表示と解釈される場合、または、A、有効な意思表示であるとしても合意解約の申し込みであると解釈され、会社の承諾の意思表示がなされるまでに撤回の意思表示をした場合には労働契約の解約が無効または撤回されて、依然と同じように勤務することができると考えられます。

法的構成について
  @について

まず、あなたと会社との間において、労働契約(労働契約法6条)が成立していたことは、間違いないと考えられます。そこであなたが行った発言、辞表の提出によって労働契約が終了する(またはした)といえるかどうかを考える必要があります。期間の定めのない労働契約における労働者は、民法627条1項によって2週間の予告期間をおけば、いつでも自由に労働契約を終了させることができます。そして労働契約が終了する(またはした)といえる場合、法的に契約関係にない以上、以前と同じように勤務することができないと思われます。
 あなたの場合、「こんな会社辞めてやる」と啖呵を切り大学ノートに「辞表」の走り書きをしていますが、「辞めてやる」という言葉や「辞表」という文字は、通常労働契約を終了させる意思表示と考えられます。そこであなたの意思表示に心裡留保や錯誤、詐欺などの瑕疵があった(民法93条、95条、96条)という事情がある場合に無効な意思表示であったといえると考えられます。
 今回あなたは、「こんな会社辞めてやる」という発言をついカッとなって行っており、本当は辞める意思がないのに辞める旨の発言を行っているといえますので、その意思表示が真意に基づかないことを会社側が知りまたは知ることができた場合、意思表示は無効となります(民法93条但書)。
 もっとも走り書きとはいえ「辞表」を書いて提出していること、書面作成を最後まで行い帰宅していることから、会社があなたの意思表示につき真意に基づかないことを知っていた、知ることができたと解釈することは難しいと思われます。

  Aについて
 そこであなたの「辞める」という意思表示は有効であると考えられます。この場合、次にあなたの意思表示が一方的な解約としての辞職たる意思表示であるのか、労働者と使用者の合意に基づく解約たる、合意解約の申込みの意思表示であるのか意思表示の内容についてさらに検討する必要があります。なぜなら前者にあたる場合、労働者(被用者)たるあなたは意思表示の撤回をすることができないと一般的に考えられていますが、後者に当たる場合、会社が承諾の意思表示をするまで撤回ができると考えられているからです(大隈鉄工所事件最3小判昭和62年9月18日参照)。
 あなたの場合、「こんな会社辞めてやる」と啖呵を切り大学ノートに「辞表」の走り書きをしている点からは、会社側の対応や返答を待って結論を出そうという趣旨の意思表示と捉えることは合理的な意思解釈であるとはいえない可能性があります。
 そうすると、会社側の対応や返答を待つ意思のない、一方的な解約としての辞職たる意思表示と考えることが一般的であるといえます。このように考えると、あなたの意思表示によって労働契約は終了し、あなたは以前と同じように勤務することができない可能性が高いといえます。
 もっとも、この解釈の点については、労働者に2週間の予告期間内であれば撤回を認める余地があるという考えなど、未だ争いがあることも事実です。また、上司との喧嘩が発端となっていることから、精神的圧力を加えながら執拗に退職を迫ったとして、別途不法行為(民法709条) が成立しうる予知があると思われます。
 より詳しい具体的な相談は弁護士に相談することをおすすめいたします。


▼マンション管理

質問 私はマンションの管理組合の者です。当マンションにおいては、管理規約においてペット禁止条項を設けており、マンション内におけるペットの飼育を禁止しております。しかしながら、この規約に反してペットを飼っている住民の方がいます。どのような対処をするべきでしょうか。

回答
 まず、最も穏便に済ませる方法として、管理規約に反する住民に対してのみではなく、マンションの掲示板などに、ペットを飼っている場合に生じるにおいや音、衛生面に対する苦情がある旨の掲示をすべきでしょう。
これで改善されない場合、管理規約に定められている措置、または集会決議で決定された措置を採ることができます。また建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法とします)において定められている措置をとることができます。

具体的対応措置については下記法的根拠をご参照ください。

法的根拠について

区分所有法上の措置について
 区分所有法上は行為の停止請求、行為結果の除去請求、予防措置、専有部分の使用禁止請求、区分所有権の競売請求ができると規定されています。これらの請求は区分所有法6条が区分所有者は共同の利益に反してはならないとしている趣旨に鑑み、共同の利益の保護のために認められています。すなわち、マンションでは、構造上、天井、ベランダ、床、壁などが上下左右に密着していることが通常ですので一戸建ての家に比較して物理的な生活スペースが近接しており、他者に及ぼす影響が大きく、建物の管理や使用に障害となる行為を禁止しています。
 具体的には、区分所有法57条1項によって、@区分所有者が、A他の区分所有者の共同利益に反する行為をした場合、又はそのおそれがある場合には、その行為を停止し、結果を除去し、予防するため必要な措置をできると定められています。
 これに該当すれば、ペットの飼育という行為を停止することができます。この請求は裁判によらないで行うことができますが、集会における区分所有者、議決権の各過半数があれば裁判による請求をなすことができます(区分所有法57条2項)。
 次に区分所有法58条1項によって、@区分所有者が、A他の区分所有者の共同利益に反する行為をした場合、又はそのおそれがある場合に、B共同生活上の障害が著しく、C行為を停止することでは障害の除去が困難であるときは、区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができます。この場合には、裁判によらなければならず区分所有者、議決権の各4分の3以上の賛成が必要となります(区分所有法58条2項)。また相手方への弁明の機会を与えなければなりません。これは区分所有者が本来自由に使用できる専有部分の使用自体を禁止するという重大な不利益を被らせる措置である為、より厳格な要件の下で認められているのです。
 さらにもう少し厳格な要件を満たせば、区分所有権、敷地利用権の競売を請求することができます(区分所有法59条1項)。すなわち@区分所有者が、A他の区分所有者の共同利益に反する行為をした場合、又はそのおそれがある場合に、B共同生活上の障害が著しく、C他の方法では障害の除去が困難であるときで、区分所有者、議決権の各4分の3以上の賛成を経て裁判を行うことが必要となります。また相手方への弁明の機会を与えなければなりません。
 また同様に厳格な要件を満たせば、占有者に対しても賃貸借契約を解除し、その専有部分の引渡しを請求できます(区分所有法60条1項)。
 なおこれらの請求についてマンション管理組合が請求の当事者になれるのか問題があります。法人化されたマンション管理組合は請求の当事者になることができますが、そうでなければ管理者または集会により指定された区分所有者が当事者となります。

管理規約上の措置について
 上記区分所有法上の請求に共通する要件として、違反行為が共同の利益に反することが挙げられます。ペットが他者に危害を加える危険性がない、においや音などにより平穏な生活が害されることが少ないなど、ペット飼育が共同の利益に反するとまではいえない場合、上記区分所有法上の措置を採ることができません。その場合には、管理規約にあらかじめ定めておいた対抗措置(区分所有法30条1項において、区分所有者相互間の事項につき管理規約を定めることができこれに違反した場合の対抗措置も規定できます)をとることになります。その場合、公序良俗に反しないような管理規約である必要があります。
 もしまだ管理規約に対抗措置を規定していない場合、管理規約の設定にあたりますので、区分所有法31条1項前段の規定により、区分所有者、議決権の各4分の3以上の賛成を経て行う必要があります。その場合、標準管理規約67条1項、3項が参考になるでしょう。同条1項には葉規約違反是正のために必要な勧告、指示、警告を行うことができるとされています。また同3項には、行為差止めその他法的措置の追行や、生じた損害賠償金の請求を理事長が行うことができるとしています。

以上法的措置が取れるケースはその規約違反対抗措置の有無や、違反行為の他の区分所有者らの生活にあたえる影響の大小によって大きく異なってきます。詳しくは弁護士に相談をすることをおすすめ致します。

建物の区分所有等に関する法律6,30、31、57−60条


▼刑事、親族相盗例

私は、孫がまだ12歳で両親に事情があり孫の財産を管理していたのですが、その後家庭裁判所で未成年後見人に選任されました。預かっていた財産である預金から選任される前から数十回にも分け1000万円ほど家庭裁判所にも内緒で自分の生活費、旅行費用家の修繕費等に使ってしまいました。私はどうなるでしょうか。

回答 業務上横領罪(刑法253条)に問われる可能性が高いといえます。なお、親族相盗例の適用ないし準用(同法244条1項)はなされないと考えられます。

法的構成について
原則として、他人の財産を勝手に自己のために使用してしまう行為には、財産の占有が無い場合は窃盗罪(刑法235条)、ある場合は横領罪(同法247条)が成立します。今回の場合、法律上未成年後見人に選任されお孫さんの財産を管理する立場にあるあなたは、業務上他人の財産を占有し管理する立場にあるといえます。そこで、業務上横領罪(同法253条) に問われる可能性があります。しかし、刑法には、親族相盗例(同法244条)という規定かあります。この規定は親族間で発生した、財産に関する犯罪は親族内で処理すべきであるとして、一定の場合に刑を免除しています。すなわち親族間で、窃盗罪・不動産侵奪罪・詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪・背任罪・準詐欺罪・恐喝罪・横領罪・業務上横領罪・遺失物等横領罪とそれらの未遂罪を犯した場合、その親族が配偶者、直系血族又は同居の親族である場合には刑が免除され、その他の親族であった場合は、告訴が無ければ公訴提起ができないとされます(244条1項の適用ないし準用) 。
 この規定によればお孫さんとあなたは直系血族にあたりますので、刑法244条1項により刑が免除されることとなるとも思えます。
 もっとも、あなたは家庭裁判所によって未成年後見人に選任されているという特別の事情が存在いたします。このような場合、当然に刑法244条1項が準用されることとはなりません。以下その理由を説明いたします。
 刑法244条1項は親族間の一定の財産犯罪については、国家が刑罰権の行使を差し控え、親族間の自律にゆだねるほうが望ましいという政策的な考慮に基づき、その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず、その犯罪の成立を否定したものではないと解されています(最判昭和25年12月12日判決)。一方、家庭裁判所から選任された未成年後見人は、未成年被後見人の財産を管理し、財産について未成年被後見人に関する法律行為について未成年被後見人を代表します(民法859条1項)が、権限の行使に当たっては、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(同法869条、644条)、その場合家庭裁判所の監督を受けます(同法863条)。また家庭裁判所は任務に適さない事由がある場合には、職権でこれを解任することができるという点で未成年後見人に対する家庭裁判所のコントロールが及んでいます。このように民法上では未成年後見人に対し被後見人と親族関係にあるか否かの区別無く、等しく未成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負わせているといえます。
 そうすると、未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、家庭裁判所から選任された未成年後見人については上記親族間の自律にゆだねるといった政策的な考慮という244条の趣旨があてはまるとはいえず、刑法上の処罰を免れるものと解することは困難であるといえます(この点については平成20年2月18日に最高裁の決定がなされました)。
 以上のような理由から、未成年被後見人であるあなたに対しては親族相盗例の適用ないし準用がなされることは考えにくく、業務上横領罪(刑法253条)に問われる可能性が高いといえます。